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上海ディズニーランドがついに着工

上海ディズニーランドがついに着工


米ウォルト・ディズニー社との協力協定締結


 昨年の11月、米ウォルト・ディズニー社(以下、「ディズニー社」と言います)と、上海ディズニーランドプロジェクトの開発・運営管理を行う上海申迪(集団)有限公司が協力協定を締結しました。これにより、上海ディズニーランドプロジェクトによる基本的な交渉は終了し、本格的に建設が始まることになりました。
 世界最大のテーマパーク建設に関する協定締結を、10月で終了した上海万博後としたのは、万博だけでは終わらず、今後も引き続いて、グローバルな大都市へと躍進する上海を世界にアピールする狙いもあったのかもしれません。
 上海ディズニーランドは、中国本土では初めて、アジアで3番目、世界でも6番目のディズニーランドとなります。
 上海市は、2011年から始まる「第12次5ケ年計画」のテーマのひとつとして経済構造の転換を掲げています。上海ディズニーランドは、経済構造転換の象徴と言われています。上海ディズニーランドの建設が、経済構造転換の主要目標である、消費と民生重視の低炭素型サービス経済体の育成を強力に推進するものとして期待されています。
 また、上海では、虹橋空港周辺総合交通ターミナル開発、上海万博跡地開発と並び、上海ディズニーランド計画地を含めた国際観光リゾート区(中国語で、「上海国際旅遊度暇区」)開発が「第12次5ケ年計画」の重点開発に指定されています。


世界最大を目指す上海ディズニーランド


 上海市と浦東新区は、上海ディズニーランド建設費用約245億元を含め、周辺の交通インフラ建設費用も合わせて約1,000億元の資金を投入する予定になっています。
 第一期工事は、早ければ2014年にも完了する予定となっています。建設工事予定地は、過去にあった住宅の取り壊しも終わり、整地作業も終わっています。また、第二期・第三期工事予定地の土地も、既に収用されているようです。
 2009年11月に、上海市がディズニーランドの建設を認可しましたが、その際、公表されたディズニーランド計画地の面積は、世界でも最も狭い香港ディズニーランドよりも小さいものでした。香港紙の報道によれば、認可した開発面積が香港ディズニーランドより小さかったのは、香港ディズニーランドに対する香港政府への配慮があったとも言われています。
 現在では、上海ディズニーランド用地として収容された土地は4平方キロメートルを超え、第三期工事完成時には世界最大のディズニーランドを目指すとも報道されています。香港ディズニーランドが1.26平方キロメートル、パリのユーロディズニーランドが1.95平方キロメートル、東京ディズニーランドでも2.01平方キロメートルですから、いかに大きいかがお分かりいただけると思います。
 観光客数は、第一期完成時で1,000万人以上、第三期(全期)完成後では3,000万人以上を見込んでいるようです。

 報道によれば、上海ディズニーランドプロジェクトチームが2001年に米オーランドにあるディズニーランドを視察したそうです。
 視察の際、オーランド市政府は1960年代、現地経済を発展させる目的でディズニーランドの建設を決定、5年後には開園し、開園後は、オーランドはまたたく間に、一農業都市から重要観光都市への変貌を遂げたこと、また、就業人口の80%が直接・間接的にディズニーワールドのサービス業に携わり、オーランドの観光収入は、今では、年間100億ドルに達しているということなどが分かったとのことです。プロジェクトチームは、ディズニーランドは小型で手軽なものであってはいけず、大型の施設であってはじめて、来場者が存分に楽しめ、一定規模の経済効果があるものとなる、と結論付けたようです。ちなみに、オーランドのディズニーランドは約122平方キロメートルもあるようです。

 中国国内の13億人という人口の多さは、ディズニー社にとっても大きな魅力であったことでしょう。
 加えて、上海を中心とした長江デルタ地区の潜在能力の高さが、上海でのディズニーランド建設を後押ししたのではないかと思います。
 2009年の、中国の1人当たり名目GDPは3,687米ドルでしたが、地域別で見ると、上海がトップの11,563米ドル、浙江省が6,490米ドル、江蘇省が6,475米ドルと、長江デルタ地区に位置している3地域の1人当たりGDPは突出しています。更に、この3地域の人口を合わせると約1億5,000万人となり、日本の総人口数より多いことが分かります。
 マカオのカジノ収入が、カジノの本場ラスベガスを上回ったのも、周辺エリア(珠江デルタエリア)の人口の多さと消費意欲の高さがあったからだと考えられます。マカオのカジノビジネスの成功要因のひとつを周辺エリアの人口の多さと消費意欲の高さととらえるならば、上海ディズニーランドが順調にいけば、東京ディズニーランドの観光客数を上回るのも時間の問題でしょう。


上海ディズニーランド建設により注目を集めた川沙


 2009年に、上海市が上海ディズニーランドの建設を認可し、ディズニーランド建設がより現実味を帯びてから、ディズニーランドがある川沙というエリアに注目が集まりました。
 川沙は、浦東空港からは最も近い(上海市では最も東に位置する)住宅エリアで、上海市の郊外の中での中心街として発展してきたところです。とはいえ、国際都市上海とは思えないほどのローカルチックな街で、今でも、中国の昔ながらの風景を見ることができます。
 ディズニーランドの建設認可がおりてから、住宅価格は急上昇し、認可の発表前は12,000から15,000元/平方メートルであったものが、発表後は、上海の平均住宅価格並みの20,000元/平方メートル前後まで上昇しました。2010年4月に出された国10条の影響で、価格は落ち着きましたが、1万元台後半/平方メートルの水準を維持していました。

 今回、ディズニー社との協力協定が締結されたことにより、川沙が再び注目を集めました。
 地元の仲介業者の話では、電話での問い合わせが倍増し、価格もすぐに1から2,000元/平方メートル程度上がったとの報道もありましたが、今回は、住宅価格が急激に上がることはなく、すぐに落ち着きました。川沙で住宅を購入する人は、投資目的というよりも、いまだに、地元の人や仕事で当地にやってきた人が多く、このような方達が購入できる不動産価格には限界があること、また、投資目的で購入したいという人がいたとしても、2010年10月に発表された上海政府の新政策(一定期間、購入できる部屋を1部屋に限定するという政策)を考慮し、購入を控えた人が多かったからだと思われます。
 一方で、家賃は上昇傾向にあるので、川沙の不動産物件の投資価値は上昇しているとも言えます。

 ディズニーランド計画地は、浦東空港から車で15分程度、市中心部からは4、50分程度のところに位置しています。また、開園までには、地下鉄11号線がディズニーランドまで延伸する計画がありますので、アクセスも比較的良いのではないかと思います。
 上海市政府は、計画地選定にあたっては、浦東空港から大型バスで10分程度で移動できる場所を条件としてあげているという報道もありましたので、上海市政府が概ね意図していた場所を選定できたということになります。
 第一期工事は、黄楼鎮旗杆村というところにある「川沙A―1地」で、面積は1.16平方キロメートルあります。先日、第一期工事が行われる計画地を視察してきましたが、現在、既に工事が進められており、大型トラックが計画地を頻繁に行き来していました。まだ何もないだだっ広いだけの土地に見えるこの土地にディズニーランドができるのかと思うと何とも不思議な気分になりました。
 第一期工事の目玉は「水」となる予定で、面積が0.39平方キロメートル、周囲の長さが約5.5キロメートルの「湖」が建設されると報道されています。
 川沙という地名からも想像いただけるように、計画地内にも、川が多く流れています。自然の少ない上海では、川や海、山や公園などの自然が、貴重な資源として重宝されます。住宅開発においても、川沿いに建てられるマンションは非常に人気があります。この貴重な資源を生かしてディズニーランドを開発すれば、中国人の心をとらえる素晴らしいモノができあがるのではないでしょうか?


上海ディズニーランド建設により注目を集めた業態


 ディズニー社との協力協定が締結されたことにより、再び注目を集めたのは、川沙の不動産ばかりではありません。

 報道では、上海ディズニーランドの建設は約100社の上場企業に恩恵をもたらすと言われています。
 上海証券のアナリストは、契約締結段階では土地、インフラ整備、観光業、建設期は商業・小売、飲食、観光、交通、開園時には印刷、メディア、特許商品などの分野が恩恵を受けることになると予想しています。

 ディズニーランドを成功させるためには、周辺のインフラ整備やホテル・商業施設の整備は欠かせないでしょう。したがい、これら関連業界への波及効果は計り知れないと思います。
 現状でも、川沙エリアは、ひとつの物流拠点となっており、高架路を使えば、上海市内への移動は比較的便利とも言えますが、高架路や大きい通りを除けば、狭くまだ整備されていない道も多く残ります。上海万博開幕までに、万博会場周辺の道路整備が急ピッチで行われたように、ディズニーランド開園までには、ディズニーランド周辺の道路関連の整備が進み、交通の近代化が進むものと思われます。
 商業施設については、川沙に国際レベルの商業施設が少ないため、施設を作るだけでなく、どうサービスを提供し、地域にどう溶け込んでいくかが大きな課題だと思われます。川沙で目をひく最新大型商業施設は、2010年6月に駅近くにオープンしたMax Mall(緑地東海岸)くらいです。Max Mallは、上海の大手デベロッパーである緑地集団が上海の各地に展開している複合商業施設です。川沙のMax Mallにも、オフィスビル2棟に映画館、各種商業施設のほか、国際的なホテルであるハワードジョンソン(Howard Johnson)があります。先日取材に訪れた日は、川沙の中心部にあるローカル商業店舗街のにぎやかさとは裏腹に、休日でもあるにもかかわらず、人はまばらでした。これは、駅から近いとは言っても、川沙のローカル商業店舗が集まる中心部から離れていることだけではなく、現状では、Max Mallのような最新大型商業施設が受け入れられる土壌が、川沙では育っていないことも原因のひとつなのではないでしょうか?

 上海万博開幕までにも、万博会場周辺を中心に、観光客を受け入れるためのホテルが林立しました。ディズニーランド周辺でも、今後、急ピッチで、国内外の観光客を受け入れるホテルが建てられていくと思われます。万博会場周辺に建てられたホテルは、あくまでも、万博に来る観光客を受け入れるために建てた臨時宿泊施設的な側面もあり、万博後は稼働率も低下していますが、ディズニーランドが開園すれば、ホテル業界も再び活性化するのではないかと思われます。
 現在の川沙エリアには、バジェットホテル(中国語では、「経済型酒店」)が多く見受けられます。代表的なものに、「錦江之星(Jinjiang Inn)」「如家快捷酒店(Home In」「漢庭連鎖酒店(Hanting Hotel)」「Motel168」「速8(Super8)」があります。これらのバジェットホテルは、都心中心部よりも、中心部の周辺や郊外で多く展開されています。部屋はこぎれいにし、コンパクトで余分なモノは排除しており、1泊200から350元(2,500から4,000円)程度です。上海では、安いホテル・旅館であれば1泊100元(1,250円)前後のもあるので、そこから見ればやや高いのですが、4ツ星、5ツ星ホテルから見れば値段は格安で、ビジネスマンなどに非常に人気があり、ここ4、5年で急成長しています。急成長したホテルチェーンの特徴は、どの会社もブランド力と資金力を併せ持っていることです。Motel168は、モルガンスタンレーが出資しており、既存の工場や倉庫をリノベーションしてホテル仕様にするというビジネスモデルで、またたく間に全国に店舗を増やしていきました。

 道路などインフラも整備され、国際レベルのホテル・商業施設が建てられるようになれば、今後、必然的に周辺の地価は上昇していくことになると思われます。ディズニーランドが開園すれば、ディズニーランド関連で新たに就業すると言われる約13万人を受け入れるための住宅も必要になります。就業者は、地元の人に限らないでしょうから、これまでよりも品質の高い住宅を供給する必要になってくると思われます。そうなれば、川沙の平均住宅価格や住宅家賃も上昇することが予想されます。


上海ディズニーランドに期待すること


 上海では20年ほど前に、中国版「ユニバーサル・スタジオ(環球楽園)」「アメリカンドリーム(美国夢幻楽園)」が前後して開園し、開業当初はにぎわったそうなのですが、中国市場に馴染めずいずれも失敗に終わったという苦い経験があります。
 ディズニーランドが成功するかは、中国市場に馴染み、いかに中国人の心をとらえたものを作れるかがカギと言えそうです。
 上海万博の開催は、上海に、交通インフラの整備(特に、地下鉄網の発達)とともに、マナーの改善などに大きく貢献しました。私が2004年に上海を初めて訪れた際には、中国人のマナーの悪さに唖然としました。今では日本でも当たり前になった、エスカレーターの(東京では)左側に立つというマナーも、この国では何十年先になるのだろうかと感じました(私は、大学の卒業旅行でアメリカに行き、その際、エスカレーターの端に寄って立っているアメリカ人を見て、日本はまだ遅れているなと感じました。それから、日本人が、エスカレーターの端に立つようになるまで10年かかりました)。上海万博期間中に、エレベーターでは右側に立つようにというマナー向上運動が行われた結果、混雑時を除けば、市中心部では、エスカレーターの右側に立つようになるなど、マナーが向上しました。

 専門家によると、上海ディズニーランドの開業が上海市の観光業にもたらす寄与度は10%以上、上海市の域内総生産(GDP)への寄与度は1%強に達するそうです。
 ディズニーランド建設が、上海に大きな経済効果をもたらすことのみならず、サービスの向上や、文化レベルの向上に大きく寄与することを願ってやみません。



芝田優巳(しばた ゆうじ)
株式会社シノケングループ 経営企画部 海外事業部 課長
不動産鑑定士 税理士 上海在住歴4年
早稲田大学大学院商学研究科修了
中国では、不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。
現在は、中国不動産コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。
(お問い合わせは、y-shibata@shinoken.co.jp)

2011年1月号