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2023.12.26 / メディア情報

【日本経済新聞】海外REIT 成長の柱に


不動産販売のシノケングループ(福岡市)がビジネスモデルの転換を加速させている。MBO(経営陣が参加する買収)による東証スタンダード上場廃止から1年、次なる成長の柱に据えるのは、不動産投資信託(REIT)ライセンスを持つインドネシア事業だ。今後の企業戦略について篠原英明社長に聞いた。

――2022年12月に東証スタンダードの上場を廃止しました。

「主な目的は、サービス事業を中心としたストック重視型のビジネスモデルへの転換だ。これまで主体だった不動産セールスは金融政策の影響を受けやすく、販売拡大のために借り入れを増やすと将来的なリスクも伴う。持続可能なグループの成長には大胆な変革が必要と考えた」
「不動産セールスからサービスへ事業の中心が移ると、一時売り上げは下がる。長期的な成長のためには仕方ないが、株主は許してくれない。対外的な説明にも時間がかかる。ビジネスに求められるスピード感が速いと『3年ひと昔』になる時代に、経営の意思決定を迅速にしたかった」

――新たなビジネスモデルの中で成長をけん引する事業は。

「一つは海外事業、特にインドネシアだ。15年に進出し現地法人を設立した。地場ゼネコンのM&A(合併・買収)も実施し、用地確保から建設、運営まで一貫した体制を整えている」
「これまでジャカルタ中心部でサービスアパートを開発してきたほか、19年には外資系企業で唯一となるREITライセンスを取得した。インドネシア政府は今後、新たにライセンスを出さないと言っており、REITを組成したければ日系なら我々しかいない。この点で競争優位性を獲得できたと感じている」

――インドネシアREITの需要はどの程度ありますか。

「日系企業だけでなく、インドネシアやシンガポール、オーストラリアといった様々な国から問い合わせがある。7月に現地の証券取引所と協力してカンファレンスを開催したところ、インドネシアの機関投資家や各国の不動産会社など100人以上が参加した」
「『物件を売却したいから当社でREITを組成できないか』というニーズは絶えずある。開発した倉庫やマンションを流動化させ、新しい案件に取りかかりたい事業者は多い。インドネシア不動産に投資したいという運用側の需要も大きい」
「ライセンス取得直後に新型コロナウイルス禍になってしまい出遅れたが、足元では来年に組成するファンドの構想を練っている状況だ」

――業績に占める海外事業の割合は。

「いまは経常利益が年1億円ほどで、うちインドネシアが8〜9割を占める。目指すはまず海外事業で全体の1割だから、経常利益が計100億円とすると10億円が目標だ」

――海外事業以外に新たなビジネスモデルを支えるものはありますか。

「国内REITの上場も一つだ。現物の不動産に限らず、金融商品として小口化したものを誰でも気軽に買えるようになれば資産運用に生かせる。特に我々の保有物件は入居率が平均98〜99%と、高いパフォーマンスが売りだ。来年には上場の申請を検討したい」
「アパート経営事業のニーズも底堅い。例えば、土地を買って建物をつくって販売というこれまでの単純な開発ではなく、バランスシートに負担をかけずに収益を上げられるビジネスモデルを築くなど、スキームを進化させていく」

――再上場の可能性は。

「まずは3年程度でビジネスモデルを変革させる。その後の成長目標は、経常利益が最低でも年100億円以上だ。再上場ありきではないが、成長のための手段として選択肢の一つになるだろう」

(聞き手は橋爪洸我)
「日本経済新聞 2023年12月26日朝刊」
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